消し忘れた夢の破片 ゆらゆらと揺れるような夢......　激しく脳裏を駆けめぐる夢...... 夢は現実の裏返し、夢は具体化された恐怖、夢は畏怖の象徴、夢は希求の現れ、 夢は...... ６月、北半球では昼間が一番長くなる。夜明けは早くやってくる。 朝、目覚めた時に記憶に残るのは、夜明けの頃に見た夢だ。 夜明け近くでなくても、眠りが浅くなった時は夢を見る。 でも、その殆どは記憶されることなく、洗い流されてしまう。 夜明けの夢が、朝の光を受けて粉々に砕け散る。破片がキラキラと降り注ぐ。僕は混乱し、当惑する。自分の知らない自分が、露出している。漠とした希求、無意識を装った意識、そういったものが顕われている。 消し忘れた夢の破片、消してはならない夢の破片。 朝、５時。 夜が明けて、雲が、光る。 目が覚めて、夢の残滓が、光る。 光が、あふれる。
（初演時プログラムノートより） 服部吉之氏、真理子氏の委嘱により作曲 デュオ服部演奏会にて初演（1996） AltoSax.服部吉之、Pf.服部真理子